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象形青磁の精髄、青磁魚龍形注子と亀龍形注子
Date2019-02-22 Hit523

 象形青磁の精髄、青磁魚龍形注子と亀龍形注子 : 張 成 旭

高麗時代を代表する美術品のひとつである高麗青磁は、中国についで世界で二番目に製作され、華麗に同時代を風靡しました。高麗青磁は、中国磁器の様式を踏襲するだけでなく、高麗だけの独特な美感を生かして、色と装飾技法、文様、そして形などにおいて中国とは異なる面貌を明確に表しました。とくに玉のように青色の「翡色」と造形が完璧に調和をなした象形青磁は、実用性に加えて、鑑賞の対象として美的にも成功した高麗青磁最高の境地といえるでしょう。

初期の高麗青磁は、茶碗を中心に食生活に必要な器が製作されました。以後、高麗青磁は需要と生産量が増え、早く発展し、変化しました。中期に至って高麗青磁は、種類、形、装飾技法とモティーフが多様になり、釉色は澄んで透明な翡色を帯びるなど、全盛期を迎えました。鉢や皿のように日常生活に必要な各種器はもちろん、香炉、香埦のような儀式器、そして水滴、硯、椅子、瓦のように日常生活や建築などに必要な様々な物品が青磁で製作されました。また特定の人物の姿や動物、植物の形を取った象形青磁が多数作られました。

国宝第61号青磁魚龍形水注

 青磁魚龍形水注、高麗12世紀、高さ24.3㎝、国宝第61号

青磁魚龍形水注、高麗12世紀、高さ24.3㎝、国宝第61号

代表的な象形青磁のひとつである青磁魚龍形水注は、形が独特で、細部の表現が優れており、釉色が美しいですが、何よりも龍と魚が合わさった想像上の動物を精巧に形象化した高麗の人々の優れた創意力と製作技術が垣間見られる作品です。胴体から蓋に至るまで魚龍の姿を上手に込めたこの水注は、龍に似た頭が首を回して正面を凝視し、体は丸くうずめたまま、尻尾を天に向けて力強く跳ね上げている姿が印象的です。水が出る胴体の前側の注口は、顔の両端にぱっと広げた鰭を表し、目を剥いて正面を堂々と凝視する龍の姿を表現しています。龍の頭上には蓮の茎が垂れています。目には黒い酸化鉄顔料を小さな点で付け、生動感と活気を加えています。 表面に白土を塗った鋭い歯は、青磁の釉色と対比をなし、より目立ちます。龍の頭の下には、羽形の2つの鰭が付いています。はち切れるかのような緊張感を与える丸い胴体には、全面に小さな半円形の装飾が陰刻で一定反復し、魚の鱗を一杯に表していますが、釉薬の微妙な厚みの違いは、色の深みを加え、たいへん神秘的な印象を醸し出しています。下の部分にはまるで魚龍が仏菩薩像の台座に座っているかのような蓮弁を量感をもって装飾しています。胴体の後ろ側には、蓮茎をよじって作った把手を付け、実用性よりも象形青磁の高い装飾性を見せています。


高麗中期に製作されたこの水注は、U字形に近く削られた胴体と、上を向いた尻尾の形が水面の上を力強く跳躍する魚龍の姿を想像させます。 このような形は、中国北方に位置した遼(916~1125)で流行したものと推測されます。寧城県・中京博物館の《三彩蓮座躍鯉魚注壺》をはじめとして内蒙古で出土した多数の水注に高麗青磁の魚龍装飾とたいへん類似した特徴が表れており、高麗と遼の交流関係を推測してみることができます。11世紀後半から高麗青磁に表れる遼陶磁の影響は、貿易で高麗に入った工芸品の影響に加えて顕宗(在位:1009~1031)の時代から流入した契丹系帰化人が高麗で金属器と織物などの製作に参加し、遼文化の特性を一定部分反映させたためと見られます。

国宝第96号青磁亀龍形水注

青磁魚龍形水注に加えて、代表的な象形青磁のひとつである青磁亀龍形水注は、蓮花の台の上に座る亀龍の姿を表しました。水注の頭は、龍に似せた姿で、首を若干回して上げたまま、咆哮する姿が堂々たる威厳を吐き出しています。頭には角が後ろ側に立っています。鋭く伸びた鼻は、たいへん大きく、目には黒い酸化鉄顔料で小さな点を打ち、生動感と活気を加えています。口には牙をはじめとして歯と舌を精巧に描写し、より強い印象を与えています。胴体は亀の形で外面には亀の甲羅文様を一杯に刻み、そのなかに「王」の字を陰刻技法で繊細に刻み入れました。背中の上側中央には孔を空けており、その周辺に蓮葉を装飾しています。胴体の甲羅の下には4つの足が表れていますが、厚く大きく、鋭い爪を持っています。とくに足の甲羅の鱗はもちろん、足の皺ひとつまでも精巧に描写した点は、高麗・象形青磁の高い完成度を垣間見ることができる部分でもあります。

 青磁亀龍形水注、高麗12世紀、高さ17.3㎝、国宝96号

青磁亀龍形水注、高麗12世紀、高さ17.3㎝、国宝96号

亀の下の部分には、魚龍形の水注と同じように蓮花弁の台座を用意し、後ろには蓮茎を捩って作った把手を付けて、装飾性を加えました。品格のある蓮花弁の台座上に座している亀龍は、高麗時代の碑石の台座に見られる亀のような形ですが、青磁の発達背景に高麗仏教が大きく影響した事実を踏まえるならば、この水注もまた仏教の象徴的意味を深く持っているものと見られます。すなわち咲きほこった蓮花の上に乗った亀龍からは蓮花を通して新たに生まれる「蓮花化生」の象徴を読み解くことができ、背中の甲羅の面ごとに細く陰刻された文字には「王即仏」と高麗王室の仏教思想が融合しているようです。このように龍や魚龍・亀龍・九龍などのモティーフは、超自然的で神聖な存在として王室の権威を表したものです。

翡色の完成、象形青磁

12~13世紀高麗青磁の特徴のひとつは動物や植物、人物を表現した象形青磁が多く作られたということです。象形青磁のモティーフは、大きく自然的なものと宗教的なものに分けられます。自然的モティーフは周辺で容易に見ることができる対象、高麗時代の人々が親しんだと推測される動植物が大部分です。鴛鴦・鴨・瓜・筍・ヒョウタンなどの形に瓶、水注、水滴、香炉などを作りました。 仏像と菩薩像、羅漢象を青磁で作り、蓮花は蓮弁形で器の内外を覆ったり、胴体の根元を装飾しました。蓮弁は香炉や香埦だけでなく、鉢・皿のように上の部分が広がる日常容器にも頻繁に用いられ、蓮の花弁がぱっと開いたような効果をもたらしています。道教は、仏教のように教団をなすことができませんでしたが、睿宗代(1105~1122)を中心として、高麗王室で相当な影響力を持っていたことを『高麗史』「礼志」雑祀条の記録などを通して確認できます。そのような背景のためか、桃を乗せた盆を支える人物形の水注を作ったり、桃・猿・麒麟・鳳凰など道教と関連するモティーフを香炉、水滴などで製作しました。

高麗の象形青磁は、事物の代表的な特徴を簡潔に描写し、立体的な形状を象って作るため、ある場合には実際の事物よりも強い印象を与えます。また全体の形を手づくねで作る点において、主に陶範を使用して押し出した中国磁器と異なります。そしてより写実的で生動感ある描写が可能になり、翡色の澄んで透明さにより、細部表現の精巧さと立体感をよく表わすことができました。高麗全盛期の青磁は、このように象形青磁に代表される色と形を優先的に追及する時代から、次第に象嵌、鉄絵など簡潔な装飾に重点を置く方向にその美感が変化します。

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