天目碗
  • 年代

    高麗

  • 材料

    陶磁器

  • 寸法

    高5.6、口径12.3

  • 番号

    本館 8009

宋代の福建建窯で生産されたもので、兎の毛が何色か斑(まだら)に混ざっているような兎毫斑文の黒釉茶碗である。宋元代には福建省の他の地域でもこのような盞を制作したが、建窯のものには及ばない。
建窯兎毫盞は北宋代から制作されはじめ南宋代に最も繁栄したが、元代には生産されなかった。このように兎毫文が作られたのは胎土と釉薬の性質と関係がある。
胎土は焼成温度が低い磁土で作られ、硅素と鉄成分の含有率が高く、アルミニュウムの含有率が低い方である。釉薬の成分は硅素とアルミニュウムの含有率が一般の黒釉よりも少なく、鉄の含有率が少し高い方である。そのため高温焼成時に熱を受けて生じる気泡が、釉薬の中の鉄分粒子に触れることになる。このような場合1,300℃以上の熱で釉層が流動する時、鉄分を含んだ部分が流れ出し茄子文を形成する。兎毫文には外見上金・銀・灰・黄、そして純粋な黒がある。兎毫盞の流行は宋代の茶を飲む風習と関連が深い。
口縁周辺は赤褐色を帯びており、腹部の下方は内外共に黒地に薄褐色の兎毫が舞い散るような文様が描かれ内底には円刻があり、釉薬は濃度が高い為、分厚く滴れているが底まで届いていない。