青銅「許由洗耳」故事文鏡
  • 年代

    高麗

  • 材料

    金屬 - 銅合金製

  • 寸法

    直径3.7

  • 番号

    本館 2737

端を花模様で目立たせて残し、その内側の面に山水と人物などを陽刻で表現した高麗時代の典型的な鏡である。
鏡の裏面には小川が流れる林の中に二人の人物が描かれている。これは中国古代の堯の王の時代の隠士、巣父と許由の「箕山穎水」という故事を表現したものである。故事の内容は以下のとおりである。
「中国の箕山に隠居していた許由は、善良で知慧深いと名声が高かったため、堯の王は彼に九州を任せようとした。許由はこれを断り、聞かなければ良かったものを、くだらない事を聞いてしまったと自らの耳を穎水の中で洗ったが、この時、子馬を引いてきた巣父がこれを見た。巣父は許由が耳を洗っているという話を聞いて、隠者として名声を享受することでさえ、理に適っていないとあざ笑い、そのような人物が耳を洗った水を小馬に飲ませることなどできないと穎水を溯ってゆき、馬に水を飲ませた」という話である。
これは二人の隠者の節操と自らの主義を固く守る意志を示した故事で、水際に座って、耳を洗おうとしている左側の人物が許由で、向側で子馬を連れてきた人物が巣父である。このような故事の内容を素材にして工芸品に叙事的に表現した事例は珍しい。