○展示作品:伝李慶胤筆山水図など26点
朝鮮中期、浙派の画風の特徴を最も体現していた画家は、成宗(ソンジョン、朝鮮の第9代国王)の曾孫の李傑(イ・ゴル、1525~1593)の嫡子であり、宮廷画家だった李慶胤(イ・ギョンユン、1545~1611)です。今年は彼の逝去400周年に当たります。
李慶胤の生涯については、生没年以外はほとんど記録が残されていません。しかも彼の絵には落款がないため、制作時期が明示された基準作がなく、彼の作品だと伝称されているだけのものがほとんどです。しかし、李慶胤は、明朝の浙江省地域で活動した戴進などによる「浙派の画風」が、朝鮮画壇に伝来・定着していく過程で、重要な役割を果たしたキーパーソンです。
今回の展示では李慶胤の絵画はもちろん、その子息の李澄(イ・ジン、1581-1674以降)、血縁関係にあった李英胤(イ・ヨンユン、1561-1611)、その影響を受けた17世紀の画家の作品を通じて朝鮮中期の画壇の流れを理解し、鑑賞するきっかけになると期待されます。
伝李慶胤、山水図、絹本彩色、91.8x59.4
前のめりに描かれた遠山の形、白黒のコントラストがはっきりした山と岩の描写が典型的な浙派の画風です。
伝李慶胤、松壇步月図、絹本彩色
人物が画面に大きく描写されるなど、朝鮮中期、浙派の画風による山水人物画の傾向が窺えます。
伝李慶胤、高士濯足図、絹本淡彩、43.5x32.2
膝まで股下を巻き上げ、組んだ足を川に浸かしている人物が描かれています。屈原の詩「漁父辞」にある「滄浪の水清まば、以て吾が纓を濯ふべし。滄浪の水濁らば、以て吾が足を濯ふべし」を元にして描かれたものであり、俗世間から逃れて隠れ住もうとする隠遁思想がにじみ出ています。
李澄、煙寺暮鐘図、絹本淡彩、103.9x55.1
「瀟湘八景図」の八幅の中で煙寺暮鐘を描いた一幅。白黒のコントラストが特徴の「斧劈皴」など、浙派の画風をベースに山の緩慢な傾斜、雑然と付けられた太い点、柔らかく繊細な筆墨技法など、李澄の画風が明瞭に表れています。