○展示作品:「地獄を治める十王」など20点 国立中央博物館は「冥府殿の仏画」というテーマで書画館仏教絵画室の遺物を展示しています。死後の世界を冥府といいますが、寺院に数多くある建物の一つ、冥府殿は仏教の死後世界を具象化したものです。冥府殿の中心となる存在は地獄に落ちた人間を救済する地蔵菩薩と、地獄において亡者の審判を行う十尊、つまり十王です。今回の交替展示では、国立中央博物館の所蔵品の中で地蔵菩薩と十王が描かれた仏画を中心に、仏教の死後の世界観が窺える仏画を紹介しています。 「地蔵菩薩と地獄の王たち」では、冥府殿の最高尊格の地蔵菩薩を中尊に、十王が左右に侍立しています。『直符使者』と『監斎使者』は人が死んだ時、地獄から送られて来る、いわば死神です。 今回の展示のハイライト「地獄を治める十王」は、一幅に一人ずつ十王を描いたもので、本来、北漢山(プッカンサン)・太古寺(テゴサ)にあったものだといいます。全十幅のはずですが、第五の閻魔王の一幅が欠けて、九幅だけが残っています。十王は人が没した後、七日ごとに一回ずつ審理を行い、四十九日まで七人の王が亡者を裁きます。その後、百日、一年、三年になる日に、第八、九、十王が審理しますが、これらの審判の日に法要を行うと、死者は極楽に行けるという信仰があったので、十王は重要な礼拝の対象でした。また、絵の下段には罪深い人々が地獄に落ちて様々な罰を受ける姿が描かれており、民衆に道徳観を植え付ける教化の役割も担っていました。 今回の展示は冥府殿に安置された仏画を通じて、仏教の死後の世界観を理解し、死んだ家族や親類が地獄の苦痛を味わわず、極楽往生するよう祈願した昔の人々の素朴で切実な気持ちを感じることができます。
『直符使者』 朝鮮後期, 麻本彩色 亡者の罪の記録を地獄に伝えます。
『監斎使者』 朝鮮後期, 麻本彩色 亡者の家を訪ね、亡者の姿を監視します。
『地獄を治める十王-秦広王』 156.1x113.0cm, 絹本彩色 十王の第一王。亡者が没して七日目に裁く。下段の左には鋭い刀身が逆さに林立しているところに、地獄の牢番が罪人を投げ落とす姿が描かれています。
『地獄を治める十王-平等王』 156.1x113.0cm, 絹本彩色 十王の第八王。亡者が没して百日目に裁く。王の机上には筆箱、筆、多くの本と巻物が民画のタッチで描かれています。