1684年5月、春の香りが漂う中、尚州市淵嶽山の麓にある龍興寺では90人を超える人々の参加の下、大きな掛仏が制作されました。掛仏とは、多くの人が集まる法会や儀式の際、お寺の屋外や広場に掛ける大型仏画を指します。10メートルを超える大きな画面には、釈迦牟尼仏、薬師仏、阿弥陀仏の集会の場面が表現されています。この会の主宰者は私たちが暮らすこの世の教主・釈迦牟尼仏で、釈迦牟尼仏の全身から放される七筋の玲瓏たる光は、集いの始まりを知らせます。薬師仏は病の苦痛のない浄瑠璃世界を、阿弥陀仏は安楽のみがある極楽世界をつかさどる仏です。人々は三仏に、生きる間は病の苦痛なく長寿し、死んでは極楽世界に往生することを一心に祈願しました。
今回の展示は、寺院でも普段はなかなか見ることのできない尚州・龍興寺の大型掛仏が見られる機会です。また、掛仏を保管する箱やおどけた表情の<羅漢像>、神々の集いを描いた<神衆図>、地獄の第五殿である閻羅大王を表した<現王図>もあわせて展示します。千年を超える歴史を持つ古刹・龍興寺の息吹を感じていただければ幸いです。