再雕大蔵経の版木で印刷した経典
大蔵経は、釈迦の教えをまとめた経蔵、仏教徒の戒律である律蔵、仏教僧侶の著述をまとめた論蔵から成り、仏教経典であると同時に幅広い分野の知識が豊富に含まれていることから「中世の百科事典」とも呼ばれています。中世の東アジアでは各国で自国語の大蔵経が作られましたが、なかでも高麗の大蔵経は、内容が充実していて、木版の彫りが繊細で、最も優れているとされます。1011年、高麗の朝廷は、仏の力によって契丹の侵入から国を守るために初雕大蔵経を作りました。しかし、これはモンゴル軍の侵入を受けて1232年に焼失してしまいました。すると、当時の執権者であった崔怡は、モンゴル軍を撃退するために大蔵都監を設置し、1236年から16年間にわたる努力の末に再び大蔵経を完成させました。これが「再雕大蔵経」または「八萬大蔵経」と呼ばれているものです。現在陜川海印寺に保管されている八萬大蔵経の版木で印刷したこの『大般涅槃経』は、釈迦の入滅(大般涅槃)を叙述した経典です。これは、高麗の仏教の水準がわかる資料であると同時に、高麗の進んだ印刷文化を示す証拠でもあります。
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