特別展開催にあたり
光は、人間の暮らしを支える重要なエネルギー源であると同時に、歴史が宿る文化財を鑑賞・研究するうえでも不可欠な存在です。
以前は、人間の目に見える可視光線だけが光であると考えられました。しかし、それがすべてではありません。赤外線、紫外線、X線のように、人間の目に見えない光も存在します。こうした目に見えない光は、文化財の中に隠された制作技術の謎を解くうえで重要な鍵となり、保存科学の領域を越えて考古学、美術史学といった人文科学の分野においても新たな扉を開いてくれました。
そこで、光の科学によって得られた知識を皆さんと共有し、文化財保存科学の成果を発信すべく、特別展「光の科学、文化財の秘密を探る」を開催いたします。
本展は「光」について深く理解していただくことを目的としています。第1部「見える光、文化財の色になる」、第2部「目に見えない光、文化財の秘密を探る」、第3部「光、文化財を診察する」の3部構成で、これまでの調査を事例ごとにご紹介します。
今回の特別展が、文化財に秘められた情報を探る先端科学の現状を理解し、大切な文化財を守る未来の科学技術にはどのようなものがあるかを考えるきっかけとなれば幸いです。