写経変相図の世界!)仏、そして心
  • Date2008-12-14
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国立中央博物館企画特別展
[写経変相図の世界!)仏、そして心]


■ アジア仏教美術における繊細さ、華麗さの極み!)「写経変相図」
■ 高麗時代の国宝級写経変相図40点余りが、日本より一時帰郷

国立中央博物館(館長、キム・ホンナム)は、2007年度企画特別展<写経変相図の世界 !) 仏、そして心>を、7月24日から9月16日まで、国立中央博物館の企画展示室において開催する。

<写経変相図>の特別展としては国内初。国宝級の文化財100余点が展示される。

仏教経典の内容を凝縮し、絵によって繊細かつ精巧に表した写経変相図。その中でも高麗の写経変相図は、芸術性と審美性、精神性を兼ね備えた優れた仏教美術として名高く、早くから多くの人々の関心を集めてきた。だが保存や管理の特性上、写経変相図は、一般人はおろか専門家さえも実物に接する機会がほとんどなく、研究に多くの制約が伴ってきた。

国立中央博物館では、こうした特殊な背景を持つ写経変相図を、当館の所蔵品をはじめ、国立博物館、公・私立の博物館や美術館、そして個人蔵に至るまでを網羅、一堂に会し、一般公開する機会を提供する。

また、日本の寺院や国立博物館に所蔵されている高麗時代の文化財40余点が展示される。このうち14点は、国内初公開であり、仏教界・学界からも大きな関心を呼び起こすものと思われる。

今回の展示は、リウム(Leeum)美術館所蔵の国宝第196号<新羅白紙墨書大方広仏華厳経>をはじめ、韓国の国宝7点、宝物17点、そして日本の重要文化財2点など、国指定文化財26点が展示される。まさに写経国宝展とも言うべき展示である。

さらに今回の展示では、これまで非公開だった高麗・忠烈王代の承旨、廉承益が発願した開城南渓院石塔出土<妙法!)華経一帙>が、保存処理を終え、一般初公開される予定。

展示は二部で構成される。第1部では、国宝第123号<益山王宮里塔出土金製金剛経板>がすべて公開される予定で、写経を保管していた<経函>、<経匣>、<写経褓>などが展示される。第2部では、統一新羅時代から朝鮮時代に至る韓国写経変相図の変遷・特徴が理解できるよう、展示品が時代・主題別に展示される予定。さらに中国・日本の写経変相図を展示し、各国の写経を比較することで、韓国写経の特徴や優秀性を理解できるよう配慮している。

今回の展示では、普段接することのできない韓国の国宝級の写経変相図、華やかな表紙や写経を包んでいた写経褓(布)、さらに写経変相図に描かれた塔や香炉など、当時の工芸品なども展示され、写経変相図とその時代を一度に鑑賞することができる。

今回の特別展は、韓国の先人が、彼らの崇高な精神世界と仏教世界を一枚にの絵に凝縮した粋な芸術世界を知り、さらに今日断絶してしまった写経文化を復元する新たな機会となるだろう。

※ 附:展示品の説明


[展示品解説]

1. 華厳写経変相図、大方広仏華厳経、白紙墨書・写経変相図橡紙金泥、統一新羅時代(754-755年)、国宝第196号、リウム美術館

 

 

唐の僧、実叉難陀(652~710)が訳した<新訳華厳経>の写経変相図。新羅の景徳王13(754)年8月から14(755)年2月にかけ、皇龍寺の僧縁起法師が発願したものである。現存するのは1~10巻の1軸と44~50巻の1軸で、写経変相図は1巻の表紙に附されている。
写経変相図は2片に分かれており、紫に染めた楮紙の表面には宝相華と金剛力士像に似た尊像が、内側には楼閣中央の正面図と2躯の菩薩形(菩薩像)、そしてこれを取りまく菩薩衆がそれぞれ金泥・銀泥で描かれている。ふくよかな菩薩の顔や躍動的な線描には、唐様式の影響が強くみられ、当時の国際文化交流の様子をうかがわせる。



2. 大宝積写経変相図、大宝積経 32、紺紙金字・写経変相図銀泥、高麗(1006年)、日本重要文化財、日本京都国立博物館

大宝積経は、大乗経典の中から菩薩修行の法や授記成仏(仏が弟子に来世の仏となることを預言すること)などに関する諸経典を集めたもので、全120巻からなる。本経は巻第32の「出現光明会」の場面で、1006年に穆宗の母后である千秋太后(献哀王の太后皇甫氏)が、外族の寵臣!)致陽と同心発願した紺紙銀泥金字大蔵経のうち、現存する唯一のもので、高麗時代の金字経としては最古である。
見返し絵は、3体の菩薩が!)花足座の上に立ち、散花供養する姿である。菩薩は端正で堂々とした姿である。上段には琵琶などの楽器が宙にあり、下段には草花が咲き、絵の隙間には平行線を引いて雲や花で埋め尽くしている。空間構成や線描などに統一新羅時代の写経変相図の伝統が見られ、高麗時代初期の写経変相図の特徴がよく表れている。



3. 法華写経変相図、妙法!)華経 卷第1、紺紙銀地・写経変相図金泥、高麗(1294年)、日本宝積寺

  

同作品は、7巻の妙法蓮華経と仏説阿弥陀経などを銀泥で記したもので、4帖からなる。すなわち巻第1の裏面に巻第2を、巻第3の裏面に巻第4を、巻第5の裏面に巻第6を書写し、第4帖目となる巻第7の裏面には仏説阿弥陀経、大方広仏華厳経梵行品、千手千眼観世音菩薩大悲心陀羅尼経、などが記されている。
写経変相図は、第1帖の表紙(法華経巻第1の前)と第4帖の裏(阿弥陀経の前)にある。第1帖の表紙には釈迦説法図と護法神が、第4帖の裏には阿弥陀如来と善財童子がそれぞれ金泥・銀泥で描かれている。これら写経変相図の縁には、金剛杵と宝輪をめぐらせている。画面の下段と背景の隙間は雲文で埋め尽くされ、渦巻文で表現された仏菩薩の膝が異彩を放っている。仏・菩薩の表情は扁平に表現されており、頭頂部の中央が盛り上がっているのが独特である。



4. 不空絹索神変真言写経変相図、不空絹索神變眞言経卷第13、紺紙金字・変相金泥、高麗(1275)、国宝第210号、リウム美術館

金の線で輪郭を描き、神将を描いた変相図と、一行14字の経文からなる写経。写経変相図の神将像は、仏法守護の所願を立てた韋駄天(童真菩薩)であり、このような絵は国王が発願した大蔵経の写経にしばしば見られる。神将は、身体が右向き、顔は左向きで、身体の姿勢と裳衣のなびく様は、右向きであるのに対し、光背の火焔文と左足の天衣の裾は反対に向いているなど、動きが多少減殺しているが、全体的に力強さと躍動感がみなぎる堂々とした姿である。


5. 華厳写経変相図、大方広仏華厳経普賢行願品神衆合部、紺紙金字・変相金泥、高麗(1350年)、国立中央博物館

金の線で輪郭を描き、神将を描いた変相図と、一行14字の経文からなる写経。写経変相図の神将像は、仏法守護の所願を立てた韋駄天(童真菩薩)であり、このような絵は国王が発願した大蔵経の写経にしばしば見られる。神将は、身体が右向き、顔は左向きで、身体の姿勢と裳衣のなびく様は、右向きであるのに対し、光背の火焔文と左足の天衣の裾は反対に向いているなど、動きが多少減殺しているが、全体的に力強さと躍動感がみなぎる堂々とした姿である。



6. 華厳写経変相図、大方広仏華厳経卷第71、紺紙金銀字・写経変相図金銀泥、中国・元(1291)、日本京都国立博物館

 

元の至元28年(1291)、釈迦の誕生日とされる4月8日に、長安の終南山万寿禅寺の住持、光明禅師恵月が発願し、杭州において書写された大方広仏華厳経巻71!)72!)73と普賢行願品である。同作品は、発願文によって写経変相図の作者を知ることができるが、絵の構成・線描などに高麗の写経変相図との類似点が多いため、当時中国に赴いた高麗の写経僧の手によるものと推定されている。韓中写経変相図の様式の比較研究において極めて重要な作品である。



7. 大般若写経変相図、大般!)経卷第345、紺紙金字・写経変相図金泥、平安時代(794-1191)、奈良国立博物館

 

京都の神護寺に伝わるもので、いわゆる神護寺写経の一巻である。神護寺写経とは平安時代を代表する金泥一切経で、紺紙に銀泥で線を引き、経文は金泥で書写している。
韓国の写経は、折帖本の4面に写経変相図を描くのが一般的であるが、日本の写経変相図は、2面に描かれる点、登場人物が線描で表される点、雲文は金!)銀を用いて面で表現する点などが、韓国の写経変相図と異なる。

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